同じジャンルの本を読んだことがある場合、この本を手にとったあなたは、まず何よりも本の薄さに驚くことでしょう。
古本屋で探す場合には注意してください。両脇の分厚い本に埋もれて発見できない可能性がありますので。
あまりに情報量が少なそうに見えるこの本から学べることがあるのかと不安にかられてしまうかもしれません。
ましてや、ページを開くことで、ますますその思いは強くなります。
- 大きく少ない文字
- ページ下部の1/4は注釈スペース
- 全102ページのうち本文は60ページ、後半40ページは解説文と訳者あとがき
でも、安心してください。見た目に反して濃密な読書体験をすることができるのですから。
本書が書かれた背景・動機
「売るべきアイデアをどうしたら手に入れられるのか」
ある企業の広告部長が著者にこんな質問をしました。
あまりに素朴で吹き出しそうになる質問だと思ったものの、彼は、この馬鹿げた質問に対する良い回答を1つも返すことができませんでした。
後になって、それほど馬鹿げた質問でもなかったと思うようになり、答えを考えはじめます。
「アイデア作成の公式なり技術を開発することが質問の答えになるのではないか」
このアイデア(仮説)により得た結論が、本書「アイデアのつくり方」なのです。
わたしはこう読んだ
なぜ読もうと思ったのか?
ブログを始めてほぼ半年。
この間に投稿した記事はわずか2本。完全にいきづまっていました。
好きなコトを楽しみながらやる時間を作りたいと思って始めたはずなのに、
- どんなブログにするべきか
- どんな記事構成にすべきか
など、考えが整理できないまま時間は過ぎていきます。
考えれば考えるほど何も答えをだせず、読みたい本を読む時間もつくれず。
記事作成がさっぱり進まない一方で、ストレスだけは複利効果で確実に増え続けていました。
当初、思い描いていた理想像にはほど遠く、好きなコトを楽しめなくなる日々が成立してしまいました。
やっぱり、自分にはブログなんて無理だったのかな・・・。
そう思い始めました。(得意の諦めグセ)
でも、このままでは終われません。本当にやりたいコトをやって楽しく生きていくんだと決めたんですから。
そんな時に、積読になっていた本書の存在をふと思い出しました。
薄っぺらい本だし、今の自分にはちょうどいい情報量かもしれない。
藁にもすがる思いって感じで、本書に助けを求めたのでした。
そして、本書を読む目的として、下記の課題を設定しました。
印象に残った3つのポイントは何か?
決して読書スピードが速いとは言えないわたしでも、あっというまに読み切ってしまいました。
訳がどうにも読みづらい箇所があって、しっくりこないこともありましたが。
さて、気になったポイントについて、次の3点を紹介したいと思います。
アイデアのつくり方は1つの流れ作業である
著者は、アイデアの作成は自動車の製造工程と全く同じであると主張しています。
ちなみに、世界のトヨタ自動車さんによると、自動車の製造は次の5工程となっています。
- 工程1プレス
- 工程2溶接
- 工程3塗装
- 工程4組み立て
- 工程5検査
この5つの工程を流れ作業で行い、1台の自動車が完成するわけですね。
つまりは、
機械的な流れ作業でアイデアの作成もできる
ということです。
アイデアなるものを生み出す能力が乏しいわたしにとっては、これだけでどれだけ勇気づけられたことか。
ちなみに、アイデアの製造工程はどうなっているのかというと、次の5段階となっています。(自動車製造と同じ工程数です!)
- 工程1資料を収集する
(必要な情報を調べる・集める)
- 工程2資料に手を加える
(集めた情報を組み合わせる)
- 工程3問題を意識しない
(楽しいことをして遊び、感情を刺激する)
- 工程4アイデアが誕生する
(生まれた!)
- 工程5現実的にアイデアを具現化し展開させる
(誰かに見せる)
このうち、実際に行う作業といえるのは「工程1・工程2・(工程5)」の2(3)点だけです。
アイデアのつくり方は技術であり、訓練により高めることができる
技術である、ということは意識的に訓練することにより能力を高めることができるということです。
何も才能ある人たちだけに与えられた特殊能力ではないのです。
どうですか?ますます心が軽くなっていきませんか!?
努力することで道は開けるのですから。
どんな技術を習得する場合にも、学ぶべき大切なことはまず第1に原理であり第2に方法である。これはアイデアを作りだす技術についても同じことである。
「アイデアのつくり方」ジェームズ・W・ヤング(CCCメディアハウス)p25
つまりは、断片的な細かい知識をたくさん知っていることは重要ではない、ということです。
その一般的な原理とは次の2点です。
- アイデアとは既存の要素の新しい組合せ
- 既存の要素を新しく組み合わせる才能は、関連性を見つけ出す才能に依存
アイデアを作りだす方法は、上に書いた5つの製造工程ことであり、この作業を真摯に実践することが訓練となり、アイデアを生みだす能力を高めることができます。
アイデアをつくるためには、資料収集をいい加減にごまかしてはいけない
この技術のうち、最も重要であるのが、工程の第1段階である資料収集です。
この作業はなま易しいものではないため、みんないい加減にごまかしてしまう、と著者は述べています。
収集すべき資料については2種類あります。
- 特殊資料
- 一般的資料
特殊資料とは、著者が携わっていた広告業界でいえば、製品と消費者についての資料のことです。要はマーケティングということなのでしょう。(当面の仕事)
一般的資料と、人生とこの世の種々さまざまな出来事についての資料のことです。あらゆるジャンルの情報ということなのでしょうけど、これでは途方にくれてしまいますね。(生涯にわたる長い仕事)
アイデアの原理は、既存の要素を組み合わせることだと書きましたが、ここに絡んできます。
このため、作業工程の第1段階である「資料収集」を適当に完了させてはならないのです。
どういう行動に活かすのか?
いよいよ、検証結果です。
課題1「ブログのサイト構成のアイデアを出したい」
「課題1」については、まだ訓練中ですので、その効果について結論をだすことはできません。
しかし、作業工程の第1段階(資料収集)を実践した結果、約4ヶ月間にわたり作業が滞っていた記事作成を再開することができました!
しかも、わずか1日での完了です。(過去最短記録!といっても3本目ですけど。)
参考までに、簡単に作業内容を紹介しておきます。
当ブログは、本に関連する記事をメインに運営を予定していますので、特殊資料を下記のとおり設定しました。
- 製 品 = 本に関するブログ
- 消費者 = 本が好きな人
本好きが「本のどんなところに喜び・楽しみを感じているか」「本を選ぶときの判断基準はなにか」などについて深ぼりしてみました。(個人的主観でしかありませんが)
一般的資料の収集は長期的な作業となるため、今回の記事には入れません。
なにより、サイト構成の検討よりも1本の記事を完成させることを優先したかったということもありますが。
なお、この課題については、解決のため資料収集を続けて、出てきたアイデアをブログ運営に反映していきたいと思います。
課題2「そのアイデアを出す方法について知りたい」
課題3「アイデアを出すための行動について、悩まずに取りかかれるようになりたい」
「課題2」「課題3」については、5段階の作業工程という明確な方法がわかりましたので、悩むことなくとりかかることができそうです。(結果は別として)
読んでみた感想
この本を読むと「情報量の多寡は重要な問題ではない」のかなと思ってしまいます。不要な部分はなく、タイトルのとおり「アイデアのつくり方」に関する情報だけが記載されていると感じました。
通常の単行本であれば1冊300ページ程度でしょうか。このページ数にパレートの法則をあてはめると、重要な部分であるとされる20%は60ページ分となります。
このページ数は、本書の本文の全ページ数と一致するのです。
つまりは「通常の書籍の不要な部分をバッサリと切り捨てた1冊である」と考えることもできます。
この潔さが非常に美しく感じられ、感動すら覚えます。(Simple is best!)
「物理的な情報量は少ないが得られる情報の密度は高い」という満足度が高い読書体験でした。
おまけであっておまけでもないのですが、巻末には物理学者である竹内均さんの「解説」と訳者である今井茂雄さんの「訳者あとがき」の2点が収録されており、こちらも大いに読み応えのある内容となっています。
手にとられたら、本文だけで終わりにせず巻末まで一気に読んでみてください。
「薄いけど厚い」という矛盾する素敵な読書体験を楽しんでいただければとオススメする1冊です。
参考情報
出版された時代
- 1940年 原書の初版が出版
- 1988年 日本語版の初版が出版
出版当時の主な出来事
1940年代といえば、世界が第二次世界大戦の勃発から終結までを経験した時代です。
世界の歴史に記憶されることになる大戦と同時期に出版された書籍ということになります。
1940年代のベストセラー
- 1943年 星の王子様(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ)
- 1947年 アンネの日記(アンネ・フランク)
- 1948年 人間失格(太宰治)
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